夏が来るとふるさとのある方が、うらやましい。

 藤沢周平の「乳のごとき故郷」というエッセイ集はふるさと礼賛そのものでしょう。
しかし、「懐古趣味の産物でないとすれば、この大量のふるさと礼賛めいたエッセイは、いったいどこからうまれたのだろうか。そう問われたとき、いまなら私は、それはアイデンティティというもののなせるわざだったろうと答えることが出来ると思う」と氏は書いています。
 これは、自らのふるさとの業というか、土地が空気が染み付いているとでも言ったことでしょうか。平成九年に氏が没して十三年、この日本のふるさとを、アイデンティティを語る作家を、学者を、まだ私は知らない。(2010年4月25日文芸春秋から上梓)
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by citystone | 2010-07-20 14:02 | BOOKS